木がいっぱい、葉っぱもいっぱい

吉田博展に行った

東京都美術館でやってる吉田博展に行ってきた。

吉田博、名前は知っていたが作品は数点しか見たことがなく、今日の展覧会にも特に吉田博だからというわけではなく、お、こんなのやってるんだ、という感じでふらっと行ったのだけど、とても良かった。版画がメインだった。

吉田の版画は、そのほとんどの題材を日本に取りながらも、浮世絵的な平板な色使いではなく、まるで西洋の水彩画のような色彩だ。それに、視点や配置、つまり見せ方が西洋絵画のそれなのだ。そうした意味では、従来の日本の技術と西洋の技法を組み合わせることで新しい境地を開拓した、と言ってもいいだろう。

もともと吉田は油彩画も描いていたが、黒田清輝やその門下の白馬会の、フランス印象派に大いに影響を受けた作風をよしとしなかったそうだ。実際吉田が最初に渡った西洋の国は、当時の画壇で当たり前だったフランスではなく、アメリカだった。どちらが良いという話ではもちろんないが、当時主流だった流れから敢えて外れようとする反骨精神のようなものも、独特の作風の誕生に寄与したに違いない。

あの夏目漱石も吉田に注目していた。『三四郎』の中で美禰子と三四郎が絵画展に行き、絵の前で談義するところがあるが、そこで出てくるヴェネツィアを描いた作品は吉田の作品を指しているそうだ。作品を見ると、漱石が吉田を気に入るのもわかる気がする。

……とまあ、自分へのメモもかねてありきたりなことを書いてみた。

私はあまり絵に詳しくないので、ろくな感想を語れないことが書いてみて改めてわかった。芸術作品の感想を語るのにはやはり一定の勉強が必要だ。とにかく、今日見た作品群について言えば、色がとても鮮やかで多様だった。版画でここまで刷れるのか、と感動しきりだった。あれだけのものを仕上げるには、彫師も摺師もかなりのレベルを要求されただろう。

近代化以後の日本の絵画の歴史をあまり知らなかったので、これを機にいろいろ見てみようと思った。

たまには日記らしい日記を書いてみた。